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2024年4月/菅野 光男

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故郷で初の個展開催

菅野 光男(日本スケッチ画会・理事)

 

2023年秋に私の故郷、新潟県十日町市で初の個展である「水彩スケッチ画展」を開催しました。
個展会場となったのは画廊ではなく、友人の勤める高齢者介護施設のロビーでした。
畳ほどの1枚のボードに4点を掲示して5枚を立て掛けた、決して見た目はカッコよくありませんが手作り感のある展示となりました。

展示作品は20点でしたが、選考基準はなるべく故郷の風景を...と思いつつ、日頃スケッチする場所は東京、横浜がほとんどで持ちネタがなかったので、故郷の風景は2点に留まることとなりました。
ならば地方の人でもわかるような風景スケッチを!と、開催決定後の春から東京、横浜の有名な観光地へ出向いてスケッチし準備を進めて行きました。
案内状は、2ヶ月前に故郷近郊在住の同級生や恩師、知り合いに出しました。
はたして受け入れて貰えるだろうか?との不安を抱えながらの開催となりました。

ところが始まってみると、絵を見るお客様から聞こえてきたのは、「ここ、この前まで住んでました」とか、「母の実家がすぐそばです」とか、「観光で行きました」とか、意外に親近感を持って見て頂いたことに安堵!
それぞれが絵の前で語らう姿を見るだけで、何とも言えない満足感と既にその時点で展覧会の成功を確信しました。
昔と違って都会と田舎の距離感がない、18才まで都会を知らない...もうそんな我々の時代ではないことも感じました。

しかし初日に予期せぬことが!
突然地元新聞社2社の取材が入り、インタビューを受けることになりました。
思いつくままの回答で不安でしたが、展覧会終了後の新聞にはペン彩画の魅力やスケッチに対する私の思いが上手く纏められた記事となり、嬉しさと安堵でホッとしました。

恐縮ながら沢山の方にお褒めと励ましの言葉を頂き、初めて「先生」などと呼ばれて誰のこと?と振り返ったり^ ^;
ペンを使った爽やかでメリハリのある水彩スケッチ画の魅力は、地域を選ぶことなく地方の方にも大歓迎されました。
作品は6枚が販売となり、初個展開催の故郷のご祝儀に胸が熱くなりました。
また、長机の上に置いた出展作品のポストカードも次々と売れて、ご高覧頂いた皆様と思い出の共有が出来たことは大変良かったと思います。

またやってください!と嬉しい声、しかしドヤ顔ばかりしていられません!
この場を提供してくれた旧友K君はもちろん、絵やポストカードを買ってくれたり、ご祝儀を持ってきてくれたり、お酒やお蕎麦のプレゼントをしてくれた同級生、恩師、親戚への感謝、そして日々施設を利用されている障害者やお年寄りの方々にも大変お世話になりました。
そして施設管理の方は、日々会場入りする私にコーヒーを入れてくれたり、寒くないですか?と気遣ってくれたりと、個展の実現は心を寄せてくれる沢山の方の協力があったからこそ実現できたものと感謝しております。

そして開催期間中に中学校クラスによるグループLINEが出来、あっという間に14名が参加。その中で卒業後から会えていない全国に散らばった旧友たちと繋がったり、LINEの中で展覧会の感想と共に、私に向けた沢山の期待と希望を込めた言葉たちが綴られました。
自宅へ戻る新幹線の中では、気分上々でつい口ずさんだなごり雪?
次の展覧会を開催する時はもっと良い作品を!...と決意新たに故郷をあとにしました。


その後、新聞社の社長様より連絡があり、新聞での反響が大きかったので改めて取材をさせて頂きたいとの申し出で、年末の忙しい時期にわざわざ川崎まで出張して頂きました。


それが今年のお正月特番として、作品中心のフルカラーで新聞1面掲載となり、コトの大きさを感じると共に、今後も定期的に故郷での個展を開催する決意をしました。
今年の秋も開催予定で、次は故郷の風景スケッチを増やそうと、この冬から故郷に何度か足を運んでスケッチしております。

今回の経験で想うのは、東京、横浜近郊のみならず、展覧会開催を都会から地方へと広げて行くことの大切さです。


地方では水彩画を楽しむ方達はまだまだ少ないと感じますし、地方へ都会から優秀な方達が出向いて発信して行けば、水彩スケッチの輪は波紋のように広がってゆく可能性があると感じました。
日本スケッチ画会の皆様も、もし機会があれば、それぞれの故郷に於いて水彩スケッチ画展を開催されることをお勧め致します。


2024/04/24